- ねがい - rui
この前、牧野の部屋で高校時代のアルバムを見ていた
牧野はきちんとした性格だから、オレと違ってこまめに
写真をとって保存してたみたいで、そんな事をしないオレは
そんなアルバムなんてガキの頃のものくらいしかないから
すごく新鮮に思えたんだ。アルバムの中でまぶしそうに笑う制服姿の牧野を見てたら
あの頃を思い出して、ちょっとせつなくなった。
だって、アルバムの中の牧野はいつも司を想ってたわけだから
その笑顔もオレに向けられたものじゃないんだ・・・
今でこそ、抱きしめてキスしたり、一緒に朝を迎えたりもするけど
あの頃のオレは報われなかった。
支えるために隣にいたけど、いつもあいつの頭の中は
司のことでいっぱいで、ながす涙もこぼれる笑顔もすべて
司のためだった。
今はこんなにも側にいるのに、アルバムの中のたった数枚の
写真を見るだけでこんなに心の中が苦しくなる。今の牧野のすべては
オレのモノだけど、昔は「ちがう」ってことが我慢できない牧野のすべてはオレのモノなのに・・・
だから、制服姿が見たいって牧野にお願いしたんだ。
当然、慌てふためいて断わろうとするけど・・・
・・・クスッ・・大丈夫。
ダメッ・・・?って、オレがすこし首を傾けて悲しそうに目を伏せれば
牧野はイチコロなんだ・・・
なぜだか牧野はオレのこの顔に弱いみたいで、割となんでも
言う通りにしてくれるんだ。
わかってやってるオレもたいしたもんだよ・・・まぁ悪意は
ないからいいよね。
そして今日、家に高等部の頃の制服を持って牧野が家にきたオレの部屋で着替えればいいのに、はずかしいからぜったいにヤダッ
って言って、空いてる部屋で着替えてる。
頬杖ついてテレビを見ながら待つけど、すっかりうわの空だ
はずかしそうに、そろーっと部屋に入ってきた牧野はあの頃より
少し大人びてはいるけど、はにかむ顔や、真っ赤になってるところ
なんてホントにあの頃の牧野のまんまで驚いた。
平気な顔して隣に呼ぶけど、ほんとはかわいすぎて
このまま押し倒してやりたいぐらいでもそんなことしたら牧野おこるだろうからね・・・
外堀からかためて、順序良く・・・ね。なんて思いながら、制服のリボンに手をかけて気付いたんだ
やけに新しいなって。
オレやあいつらと違って、牧野は三年間ちゃんと制服を着てたのに
まだほとんど新品に近いほど綺麗だったからイヤな予感がして「この制服新しそうだね?三年間すごく大事に着てたの?」
って聞いたら、なんの躊躇もなく少し遠い目をしながら
「あー、これ、一年くらいしか着てないからね・・・あの時プールに
落ちて濡れちゃったから、次の日に道明寺が
用意してくれてたんだ・・・」
あの時っ?プールに落ちて濡れた?次の日・・・?
じゃあ、その日はどうしたのさ・・・!追求したいけど、コワクテできない。
オレってこんなやつだったけ?牧野は必死にいい訳してるけどぜんぜん頭に入ってこない
昔のことなんだからどうでもいいはずなのに。
仕方ないはずなのに。
高校生の頃の牧野まで手に入れたいって思ったのに
やっぱりそれは叶わぬ願いなのかな・・・牧野と司が愛し合っていたって言う事実は消そうと思っても
消せない。たとえ消せたとしても、きっとふたりの心のなかには
きれいな思い出として残ってるだろう。あの頃のオレは報われなかった。
けど、一番欲しかったモノが
今は隣りにいて「あいしてる」って囁いてくれるんだから
高校生の牧野はあきらめて司と笑わせていてやろう。・・・でも、ほんとっ、むかつく。
end
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