媚薬の後の苦さと甘さ

 

 

痛む頭を押さえながら身支度を整える
ベッドに転がりながらの花沢類のにやけた視線が
ものすごく憎くて・・・つらい。

「牧野、今日土曜だよ。そんな急がなくていいじゃん」

もっともなコトを言われるけど、あたしは一刻も早くこの場から
離れたいのよ。


記憶のない昨日のあたしがしでかしたコトを聞かされるその前に
一刻も早く着替えてココからさらなきゃ・・・

「ねぇ、聞いてる?」

花沢類ももちろん裸のままで、下はシーツで隠れて見えないものの
意外と逞しい大すきな胸板がまぶしくて・・・
同じ様に寝起きで後ろの髪なんてすこし撥ねて寝癖がついてるのに


そんな事を差し引いても
朝日を浴びてきらきらと光る天使の輪を作るサラサラの髪
薄茶のすき透ったビー玉みたいな瞳

そしてにっこり微笑んでかしげる小首。


―たまんないよ


なんだかものすごく恥ずかしくて・・・

目を逸らしながら首だけコクントふって声のない返事をする

「じゃ。ココ 」

自分のベッドの横を指差し手招きしてあたしを呼ぶ
仕方なく、とりあえず整った身支度のまま隣りに腰を下ろす

 

「ねぇ、どうしてオレたちケッコンできないの?」

「えぇ―!!」

 

いきなりつかれる話の核心に動揺したあたしはべらべら捲くし立てる

「 勝手に入っててゴメンね。・・・えっと、えっとね。
 昨日、会社の飲み会があったのよ。お世話になってる先輩が
 ケッコンして会社辞めちゃうから・・・
 それで、その。 ちょっと、飲みすぎちゃって・・・ね 」

「ぷぷぷっ。相変わらず動揺すると良く喋る。」

お腹を抱えて笑って居た花沢類が急に真剣な顔であたしの方に
向き直って軽くあたしを引き寄せながら
ほんとっ牧野って鈍感だよな・・・なんて呟いてる。

 

 

立ち上がって花沢類がコーヒーを入れて持ってきてくれる
二日酔いの頭も多少スッキリして昨日のコトを少しずつ反芻してみて
青い顔から血の気が引いて、真っ青になる・・・

ところどころ記憶は飛んでいるものの、自分のしでかした大胆な行動
昨晩のあたしの乱れっぷり・・・
普段口にしたことのない 「 結 ・ 婚 」 と言う二文字まで・・・
キャーっ。なんて事〜!!!

 

「そんな鈍感な奥さんだったらオレ、浮気し放題だね・・・
 まぁ、オレは総二郎やあきらと違って牧野だけにしか感じないけど」

「・・・やだっ。花沢類、か・かんじるっ・・なんて」

真っ赤な顔のあたしとにっこり微笑む花沢類
ふたりで微笑ましく見つめあう

 

「!!!」

 

そうじゃない、そうじゃないよ。
なんて言った!? 

―お・おくさん〜!!

確かに言ったよ。確かにそう聞こえたよ。
それともあたしったら二日酔いで耳までへんになっちゃったの??

「えぇえーーーーっ!おくさん?」

「牧野、声でかいよ。うるさい・・・」

だってだってだって―

「イヤなの?」

イヤなわけないじゃない。それどころかしたいわよ
でも・・・

「・・・だって。あたしと花沢類とじゃ釣り合わないじゃない。
 家柄とか、身分の違いとか・・・」

「ぶっ。ミブンノチガイって平安時代じゃあるまいし・・・」

だって、そうじゃない。
あんたは世間もうらやむ花沢物産の御曹司なのよ
わかってないのは花沢類だけなんじゃないの

「あんたさ、なんでオレがココ買ったと思ってんの?
 何のために親に会わせた思ってるの 」

・・・

確かに、花沢類と付き合うようになってすぐ位の時に
お父様とお母様と一緒にご飯を頂いて・・・
それから、ちょくちょく一緒にお茶したり、お買い物にも行ったりと
けっこう良くして頂いてるけど・・・

それとこれとは別のもんでしょ・・・

 

「オレがこんな風に変われたのは牧野のお陰だから
 あんた以外は何にもいらないよ・・・。」

 

世の中の女の人すべてを魅了するだろう優しい笑顔で
世の中の人がほしがるだろうモノを全て持っているであろう花沢類が

―あたしだけが欲しいと―

 

あたしは。
なんて シアワセ なんだろう。

 

「牧野から先にケッコンの事言われるなんて。
 オレも結構マヌケだな・・・
 綺麗な想い出になるプロポーズしようって考えてたのに・・・」

 

少し俯きながら、少し赤い顔で、花沢類がボソッと言う

 

あたしは。
その言葉だけで シアワセ だよ

 

あなた以外何もいらない。あなたしか見えてないから。
もしかしたらスキがいっぱい過ぎであなたさえも見えてないかも・・・

暴走しすぎるあたしをどうか優しく受け止めて。
駈け出した感情を押さえてくれるのはあなただけだから。

 

――あなたよりも
――あなた以上に
――大切なものはなにもない。

 

 

end

 

 

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