甘い罠 tukusi
桜咲く季節、花沢類は卒業して隣りの敷地の大学へと進学した
四月になっても多分いくよのヒトコトを残して・・・高三になったあたしの今度の教室からは非常階段が見える
黒板に向かって左側の窓。
一番後ろの席に座って、頑張って首を伸ばして後ろをジッと見れば
かろうじて見えるくらいのもんなんだけど・・・それでもあたしは嬉しかった
この教室に入ってきて、たまたまついた席から
花沢類といつも過ごしていた非常階段が
あたしだけの日常に入ってきたみたいで・・・いつもいつもあの階段で彼と会えるのがあたしの唯一の楽しみだった
・・・だから。
花沢類も同じなんだと思ってた。
四月になってもいままでと同じ様にあそこにいけば
会えるものだと思ってた。なのに・・・花沢類はこない・・
いつも朝から授業もうわの空で、非常階段を見張り、お昼休みには
猛ダッシュで階段を駆け昇り・・・居なかった時のあの落胆
がっかりして、せつなくて期待をもてあます
繰り返される焦燥感
今日もやっぱり来なかった・・・
やりきれない気持ちを自分の心の置く深くに隠して教室に戻る授業を聞いてもうわの空だけど、もうすぐテストがあるから
ちゃんと聞いておかなくちゃ・・・
無理にでも非常階段の方を見ないように集中力を高める終業のチャイムがなるすこし前に集中力も切れて
つい、いつも眺めている方向へと目線を送る
サラサラの髪を風になびかせて、薄茶のビー玉みたいな瞳で
コチラを見つめている、あたしの待ち望む姿がそこにある。
チャイムが鳴っていないのも、先生が「こらっ牧野、授業中だぞ!」
って言う声も、クラスメイト達がざわざわ囁く声も何も聞こえない
慌てて教室から飛び出し、走りなれた階段を駆け昇る
いつも以上にながく感じる廊下
絡まる足を必死に動かし、はやく はやく、少しでも早く花沢類の待つ、いつもの階段へ
卒業して初めて訪れた花沢類の待つ、大スキな非常階段へ
ううん・・・大スキな花沢類の元へ
はやる心で、絡まる足を必死に動かしながら走り、頭の中で
この想いに気付く
・・・そうなんだ・・・大スキなんだ
扉を乱暴にバーンと開ける
待ち望んで、恋焦がれて、逢いたくて逢いたくて仕方の無かった
・・・その姿。
階段の手摺にもたれ掛かり、軽く腕組みしながらあたしをジーっと
見つめるすき透った薄茶の瞳
「牧野、ひさしぶり」
かけられる声と同時に、愛しい人へ飛びついて首に手を回す
やっと自分の心に気がついた「 ・・・逢いたかった。ずっとずっと逢いたかった。
花沢類が・・・好き・・・・・だから。」首に回した手を外されて顔を覗きこまれる
きっと真っ赤な顔してるだろうから見ないでほしいんだけど「 くすっ、やっと気付いたんだね。うれしいよ。
ココに来るの我慢して正解だったな・・・
牧野は鈍感だから、こうでもしなきゃ自分の気持ちに
気付かなかっただろうからね」・・・なに〜!?
・・・なんですと!?花沢類!!罠だったの!?ココに来なかったのは罠だったの〜!!
「こんの〜!はなざわるい〜!!」
怒って振り上げたこぶしをいとも簡単に止められて
逆に手をとられ唇を何かが掠めるあっけにとられてると強くつよく、苦しいほどに抱きしめられて
耳元で甘く囁かれる「牧野、オレも好きだよ。ずっと好きだった」
花沢類の熱い息が耳元をかすめる、熱い体温が体中を覆う
サラサラの髪があたしのおでこを擽る・・・声にならない。
すべての時が止まったように。ココに居るのはあたしと花沢類だけで
通じ合う心が、体中にながれてくる
素直にならなきゃいけない気がする「好き・・・あたしも好き。気付かせてくれてありがとう・・・」
甘い罠に落ちて、やっと自分のほしいモノを手に入れられた
これからはせつない期待をもてあまさなくてもいいんだ・・・花沢類の背中に手を廻し願う
二人の気持ちがこのままずーっと続いていきますように・・・
end
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