君と居ると笑わずに居られない
4月 桜が美しく咲き誇る頃
オレはいつものように、幼馴染達が繰り広げる
学園内の馬鹿げた喧騒に疲れて ひとりその場を離れて
オレの秘密の場所
オレが見つけた
学園内で唯一 落ち着ける 秘密基地
非常階段へと足を向ける
重厚なガラス扉を開けると 目の前には開かれた空間
新鮮な空気と 咲き誇る桜の微かな香りが オレの鼻腔を擽り
深く息を吸い込みながら ゴロンとその場に倒れこむように寝っ転がる
仰向けに転がって 真上に広がる青い空を眩しく眺める
先ほどまでの学園内の喧騒が嘘のように
ココだけは この場所だけは
時間の流れが止まったような
時の進みから置いてきぼりにされたような
そんな静けさが 心地よく 澄んだ空気を胸に取り込む
頭上に広がる真っ青な空の 真っ白な雲の動きを
目で追ってると いつのまにか いつものように
うつら うつらと 睡魔が心地よく オレの思考を奪っていく
「・・・ねむた 」
ひとりボソッと呟いて 本能のままに
襲い来る睡魔に そのままオレの全神経を預けて 遠のきそうな思考を手放す
ああ 最高の時間 至福の時
「くそばかやろーっ! おまえらなんか 栄養過多で死んじまえっ〜」
うるさ・・・ 誰だよ・・・
オレの最高の一時を邪魔する奴は・・・
耳を劈くような 恐ろしいほどの馬鹿でかい声と
耳を疑いたくなるような あまり聞きなれない強烈な単語
「くそばかやろう・・・?」
あまりの衝撃的出来事に オレの睡魔もすっかり影を潜めて
オレは至福の眠りを妨げられたムカツキも忘れて
罵声の主の方へと好奇心の視線を送るように振り返る
オレの目に飛び込んできたのは 背筋をピンっと伸ばして
真っ直ぐに伸びた髪をふたつに分けてゆるく三つ編みして
ブラブラとおさげを揺らして 肩でハアハアと上がる息を吐く
ひとりの 小柄で線の細い少女が 非常階段の手摺にもたれていた
あんな小さな体のドコからあんなに馬鹿でかい声が出るんだろ
そんなコトを思いながら 暫く その少女を 遠目に眺めてる
非常階段を 何段か下に降りた踊り場に 寝転がってる
オレの姿には全く気付く様子もなく
ガラス扉を開けてすぐの手摺に身体を預けて 興奮してたかと思うと
今度は目の前に咲き誇る 桜の花に見入っている
なんなのさ・・・?
急にビックリするくらいの大声で叫んでみたかと思うと
今度は目を細めてウットリと桜の花に手を伸ばし
時折吹く風に揺られて はらはらと 散りゆく桜の花びらを手で受け微笑む
まるでさっきのは 空耳だったのかと 自分の耳を疑いたくなるほどに
今の彼女は 春風に 吹かれて 髪をなびかせて 全身で春を受ける
まるで 初めてこの地に舞い降りた 気の強よそうな 天使のよう
ほんの一瞬 ほんの一瞬だけ 見とれて 目が離せなかった
太陽の光を浴びて 輝く笑顔から 目が離せなかった
気持ちよさそうに春風を受けて スーッと空気を吸い込むその姿から目が離せなかった
「はああっ〜 すっきりしたっ! 」
これまた大きな声で 急に叫んだかと思うと
大きく両手でガッツポーズを作って 「1・2〜 3・4〜 」なんて言いながら
体操を始めて 自分の頬を両手でバチっと叩いて 気合を入れてる・・・ のか・・・?
「さあ、次の授業も頑張るぞーっ めちゃくちゃ高い授業料払ってんだから
元を取らなきゃ だわよっ! 」
なんて言いながら ひとり ウンウン と、頷いて 重いはずのガラスの扉を
軽々と ひょいっと開けて 校舎の中へと消えていった
まるで 台風みたいに
まるで 突然の嵐みたいに
いきなり目の前に現れて いきなり姿を消した
オレの心の中に 爽やかな 春のような風を吹かせて 去って行った
高い授業料・・・?
元を取る・・・?
ぶぶぶぶっ おもしろい・・・
「ぶははははっ なんなんだ」
あまりにもおかしくて 思わずひとり 大きな声をあげてお腹を抱えて笑ってしまっった
こんな風に笑うなんて どれ位ぶりなんだ
お腹がよじれるほどに 笑って 爽快な気分に包まれた
至福のひと時の昼寝よりも 楽しいコトを手に入れたような気がした
0574 W.S.R
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